2003年、ドラキュラを求めて春のルーマニアへ
5月13日火曜日 まずはハンガリーに到着
行くぞ、行くぞ〜♪ルーマニアのトランシルウ゛ァニア地方へドラキュラに会いに〜。というわけで、まずは、何故だかカナダのトロントからドイツのフランクフルト経由でハンガリーのブタペストへ向かう。(<-- 読むだけで息切れしそう。)
乗り換えのフランクフルトの空港では、多くの人がタバコを吸っているのにびっくり!ああ〜、喫煙友好国に来てしまった。買い物しようとトラベラーズ・チェックを出したら拒否された。空港内の大きな店で使えないなんて、がっくり。
ブタペスト行きの飛行機では、相棒Jとミラー博士と離ればなれの座席だった。飛行機は思いっきり揺れてくれて、コップの水は左隣のおじさんのお腹へ飛び散ってしまった。
入国審査は「サングラスをはずしなさい」と言われた以外は、何の質問もなくパス。機内で知り合ったルーマニア人の若い男性(イギリスの大学で博士課程をとっている知的な若者)は、当然というか足留めをくっていた。ルーマニアとハンガリーは仲がよろしくないらしく、互いの入国管理者が、ねちねち嫌がらせをするんだそうだ。
ブタペストの空港から市内のペスト側にあるホテルへ向かう。ミニバンのドライバー氏は運転がめっぽう荒くて、いつ事故を起こすかとヒヤヒヤ。せまい道路でもぐいぐい運転してゆく。歩行者へ突っ込むように走る。これでいいのかハンガリー人!
宿に荷を置いてから、駅を下見にでかけた。明日、汽車でルーマニアのシギショアラへ行くのだ。駅へ向かう途中の階段やコンクリートの路上がなんだかオxxx臭い。ペスト側は、あまり開けていないと聞いていたけど。きっとブタ側の市内は、お城なんかあったりして美しいのであろう...ハンガリーに対する第一印象が...
5月14日水曜日 汽車でルーマニアのシギショアラへ
夕べはホテルでパーティ騒ぎがあっった。眠れなかった我々3人。ハンガリーへの印象が増々悪くなる。「隣の部屋の男達がやかましかった!」とミラー博士は怒りを現し、ロビーへ向かう途中、なんと隣室のドアを笑いながら蹴っていた。
そうそう、私や相棒がクシャミすると、ミラー博士が「サーズ!」と叫ぶのには、力が抜けた。「ブレス・ユー(神のご加護を)」とか言ってくれなくちゃならないのに。トロントでSARS/サーズ患者がでたことから、博士はこれをジョークにしてしまって、咳こんだりクシャミすると「サーズ!」と言ってくれる。困った人だ。
汽車は小一時間ほど遅れて9時過ぎに出発。一等6人用の個室を3人で占有できた。お天気よく、暑い日射しが車窓から差し込む。流れる風景は田園へとかわり、牧歌的。濃いオレンジ色のポピーが緑の中に乱舞しているように見えた。
ルーマニアとの国境で係官が数名乗車して来た。我々のパスポートをチェック。大柄な係官が「マシンガンとか持ってないよな」なんて、私に訊く。おかしかったけれど、相手のマジな顔を見たら笑えなかった。
国境で1時間近く停車した後、ようやく発車。どこまでも続く緑の大地。遠く向こうの山に廃墟が見える。草原に鹿がはねている。
幾つかの町で停車したかと思ったら、いつのまにか少年が個室の入り口に来ていた。いつ乗ってきたのだろう。抱えた新聞を差し出して、買ってくれと言う。あ、これがジプシーの子たちか!物乞いが多いから絶対にお金を恵んではいけないと言われていたのだ。断っても無視しても、相手はジッと見つめながら立っている。しばらくしたら、両脚の膝から下がない少年がやって来た。膝頭で歩いて来るのが痛々しい。二人の少年は、どうやら組んでいるらしく、互いに目配せしている。脚のない少年が小銭を懇願する。両手を合わせて頭(こうべ)を垂れる。ジプシーの親は、同情をひくために我が子を不具に仕立て上げると聞いたことがあるが、本当にあり得るのかもしれない。結局、根負けしたミラー博士が、腹巻きを引っり出して分厚い札束の中からいくらかやっていた。(彼女の仕草をじーっとみつめる少年の4つの目...)
汽車の旅は7〜8時間くらいだった。夕方、シギショアラに到着。駅のプラットフォームへ降り立つや、客引き(タクシーの運転手や宿泊の勧誘の少年)に声をかけられる。それを振り切って、迎えに来てくれた若者ミハイに出会う。(彼は、本職はテレビ番組制作者でありながら、今回は我々の旅のコーディネーター・アシスタント。この後すぐに、たいへん誠実な働き者であることが判明。)
シギショアラは中世の建物がそのまま残る古風な町。ユネスコの歴史遺産に認定されている町だ。山手は城壁にぐるりと囲まれている。ホテルはその城壁の中にあった。広場をはさんで今も時を刻む時計塔が立っている。新装開店したばかりのシギショアラ・ホテルの建物は、以前はタウン・ホールとして使われていたとかで、見事なまでに梁が太い。内装は中世の武具などが飾られ、インテリアは簡素ながら重みがあって清潔感がある。プールとかエクササイズなどの設備がない3つ星ホテルだが、サービスが行き届いていてとても気に入った。残念なのは全室が喫煙室。ただ、窓が開放できるせいか、部屋に匂いがなかったのは幸い。
ルーマニアのトイレット・ペーパーは、サンドぺーパーだと聞いていたけれど、ホテルの場合はそうでもない。ルーマニア滞在は9回めというミラー博士によると、ここ数年で、この国はかなり豊かになって来たらしい。
ホテル1階のレストランで夕食のテーブルを囲んでいたら、途中で、アイルランドからやって来たジャーナリストのアナが加わった。第3回ドラキュラ学会取材のために飛んで来たそうで、ミラー博士にインタビューを申し入れていた。アナは自分がどうしてジャーナリストになったかを延々としゃべり、途中で感動のあまりか涙まで流していた。あまり他人の話を聞くようすがないので、これじゃあ質の良い記事は書けないだろうなあとぼんやり思った。
3階のホテルの部屋にもどる。窓を開け放すとアカシアの甘い香りが漂って来た。石畳を歩む馬のひずめの音がする。犬の鳴き声が夜の闇に響く。シギショアラの夜はふけて行った。