14世紀以降のこどもの本を集めた

トロント公共図書館オズボーンコレクション

カナダのオンタリオ州トロント市には、現在98の分館を有するトロント公共図書館があります。児童古書を集めたオズボーン コレクション室は、1995年11月に開館したリリアン H. スミス館の最上階に収められています。

スミス館はトロント大学からもチャイナタウンからもほど近く、ストリートカーの電停から歩いて1分ほど。正面 玄関には、まるで神話から抜け出してきたような2頭のグリフィン像が門番をしていて、来館者にご挨拶。中に入ると吹き抜けの空間が拡がっています。

オズボーンコレクションの誕生

コレクションの検索方法

珍しい子どもの本の数々

運営を支える友の会組織

テーマ別の展示会や講習会

ヘイズ コレクション

古書の保存とセキュリティー

オズボーン コレクションの未来

連絡先

The Osborne Collection of Early Children's Books

オズボーンコレクションの誕生

英国ダービーシャー州の図書館員であったエドガー オズボーン氏(1890〜1978)が、英連邦初の独立した児童図書館であるトロント公共図書館の「少年少女の家」を視察に訪れたのは1934年のことでした。

ここでは、カナダにおいて児童司書のパイオニアといわれるリリアン H. スミス(1887〜1983)の指導のもとに活発な読書指導が行われていました。スミス女史は、1912年以降トロント公共図書館の児童部において、子供のみならず大人へも児童書の重要性を説くとともに、1927年には、児童書選書に有意義な本Books for Boys and Girlsを編纂しています。

また、1913年から退職する1952年までトロント大学司書育成コースにて講義を受け持ち、後輩の指導にも力をいれました。彼女が自論を著した The Unreluctant Years: A Critical Approach to Childrens Literature (1953年)は、日本では、「児童文学論」と題され1964年に出版されました。この本は児童司書の入門書ともいわれ、広く注目されています。

「少年少女の家」でスミス女史の精力的な活動を目のあたりにしたオズボーン氏は、たいへん感銘を受けました。

氏は、永年趣味として、夫人とともに児童古書を集めており、カナダの人々が英国の古い児童書に触れる機会がすくないことに気付くと同時に、自分のコレクションを将来見守ってくれるのは、スミス女史のような有能な司書の働くトロント公共図書館だろうと考えたのです。

オズボーン夫人の死後3年経った1949年、夫人への追悼の意を込めて、またスミス女史の業績を称えて、オズボーン氏はトロント公共図書館に貴重な児童古書のコレクション2千冊余りを寄贈しました。

これらの子どもの本は、16世紀からエドワード朝の終わり、1910年迄に主に英国で出版されたものです。

top

ニューヨーク公共図書館のアン キャロル ムーア(左)

の元で学んだリリアンH.スミス(右)

トロント公共図書館委員会代表者へ

本の贈呈をするオズボーン氏

コレクションの検索方法

オズボーン氏は、寄贈の際に図書館側にいくつかの条件を提示しました。専門司書をつけてコレクションを維持管理するとともに、今後も収集を続けること、また、目録を刊行して利用者の便宜をはかり、コレクションを一般 公開することなどです。

トロント公共図書館側は、これらの条件を承諾し、1958年に「オズボーン コレクションの児童古書の目録」第1巻を、1975年には第2巻を刊行しました。2冊の目録は研究者や一般 の方々に使用してもらえるように、読書室の4つのテーブルと書架に置いてあります。

透明なガラスのドアを開けて、オズボーン室に入ると正面に受付けのデスクがあり、利用者はここで貴重品を預け、必要書類にサインをして読書室へ進みます。目につくのは、カードカタログの木製キャビネット。基本的には、著者名、書名、画家名、彫版師、出版社、印刷社、年代別 などのそれぞれのカードで検索ができます。カード自体には、詳細の説明はなく、目録参照のための頁数が記入されています。また、目録に掲載のない本は、原則としてオレンジ色の書名、著者名カードがあり、職員がオーソリティースリップと呼んでいる本の戸籍簿にあたる用紙に詳細な記述がされています。

利用者は自分の読みたい本があれば、指定用紙にその旨記入して、職員に手渡せば、職員がその本を別 室の書架から持って来ます。多くの方々が驚かれるのは、ここでは手袋を使用していないため、古い貴重な本を直に手にとって見られるということです。本の状態にもよりますが、要望に応じて複写 のサービスもしています。

top

珍しい子どもの本の数々

オズボーン氏の意志を継ぎ、収集が続けられ、現在では、手書き本、書籍、原画、書簡などを含めたコレクション点数は初期の10倍以上に成長しています。

内容は多岐にわたっています。コレクション中最古の本は、14世紀の洋皮紙にラテン語で手書きされた「イソップ物語」。活字印刷本で古いものは、15世紀にベネチアで印刷された「リオンブルノ物語」。16世紀の行儀作法や教育目的の本、そして、清教徒たちの本。18世紀の教訓物語及びチャップブックと呼ばれる安価な薄手の小冊子。19世紀にはいり、子どもの本の黄金期といわれるヴィクトリア朝に出版されたファンタジー、冒険談、学校物語など、コレクションは18項目に分類されて、基本的には著者名アルファベット順に書架に並んでいます。

オズボーン コレクションには、1910年までの作品が収められていますが、それ以降の英語で出版された優れた児童文学作品は、初代の児童司書リリアン H. スミスの児童奉仕50周年にあたる1962年に創設された「リリアン H. スミス コレクション」にあります。また、1978年には「カナディアーナルーム」が開設され、カナダ人による作品、題材がカナダに関連する作品やカナダで出版された作品が集められています。

オズボーン、スミス、カナディアーナの総数はおよそ7万点。歴史上価値のある14世紀から20世紀までの過去600年にわたる子どもの本が、ここオズボーン コレクション室(床面積:7,643平方フィート)に収められているのです。

top

運営を支える友の会組織

トロント公共図書館の年間予算の殆どは、市から供給されており、公共の図書館がオズボーンのような特種コレクションを維持してゆくのは並大抵ではありません。

運営資金の面から、また活動内容を広める意義からもオズボーンには「友の会」の組織があり、英国のエリザベス女王のいとこにあたるアレキサンドラ王女が「友の会」の支援者に名を連ねています。現在、オーストラリア、ヨーロッパ、日本など世界各地に600名以上の会員がいます。これら会員の方々へは、定期的にニュースレターを発行して活動内容を紹介すると共に、年2回行われる講演会への招待、講演内容の出版物送付などの特典があります。

「友の会」は、基金を設置し本の購入資金を募っています。これまで「友の会」によって多くの本や原画などを購入しています。 このほか、コレクションのなかから人気のあるイラストを選び、カードやTシャツなどを会費の予算にて制作し、来館者に販売しています。

top

テーマ別の展示会や講習会

一般の方に見ていただけるように展示スペースが設けられ、数箇月ごとに展示内容を替えています。過去には、ピーターラビット100歳記念展示、聖書や教訓書特別 展示などをはじめ、オンタリオ州美術館との共同企画展示を行っています。

展示スペースにある閲覧用の書架には、日本のほるぷ出版が出版したオズボーン復刻本の数々と「友の会」が出版した復刻本や展示カタログなどが並んでいます。

もっとオズボーン コレクションの内容を知りたい、児童書について教えて欲しいという要望に応えるために、司書が定期的に講習会を開いています。主に、大学生、高校生の英語や英文学、児童文学、幼児教育などを学んでいる学生が教師に引率されてやってきます。

ヘイズ コレクション (Hayes Collection)

20年以上も「友の会」会員で、古書収集家でもあったジョン ヘイズ氏が1993年に亡くなられ、ご遺族が6千冊余りの児童書をオズボーンに寄贈しました。ウエブスターの「足長おじさん」の初版、マーク トウエインの「ハックルベリーフィン」のカナダ、モントリオール初版などの貴重な本が含まれています。翌94年1月には、「友の会」の会員を招いてヘイズコレクションの贈呈式が催され、ヘイズ氏が1977年にオズボーンにて行った講演、「古書収集家の告白」の小冊子が、記念品として会員に贈られました。

これら、ヘイズ氏から贈られた本は特別なブックプレートを貼られ、本の出版年、出 版国などを考慮した後にオズボーン、スミス、カナディアーナのそれぞれの書架に分類されて収められています。

top

古書の保存とセキュリティー

装幀が傷んでいる本は専門職員が修復作業をしています。本の状態によって、特別 な箱を作ったり、ブックシューズと我々が呼んでいる簡略な箱や厚手の紙で封筒を作ったりと本の保護に工夫を凝らしています。

リリアン H. スミス館は、館内の室温や湿度が地下にあるコンピュータルームにて制御 されており、サイエンス フィクションの特別な コレクションのある3階とオズボーン室のある4階は、他の階に比べ室温が低く抑えられています。

高価な本ばかりですから、本の盗難は一大事です。開館時間外の場合、オズボーン室内へのドアは自動的に閉鎖され、来訪者は入室できません。我々職員は、入り口のドア、読書室や勉強室へのドア、職員室ドア、職員用トイレのドアを開閉できるアクセススカードを持っています。特に書庫は職員のみの入室となっています。

開館時間内は、警備員1名が各階を定期的に巡回しており、緊急の場合は館内放送で呼び出すことになっています。

オズボーン コレクションの未来

オズボーンの今後の課題のひとつは、年々増大するコレクションのカタログ化をはかり、検索を簡便化するという点です。目録情報をCDーROMにする話もあります。

来館できない海外や遠方の方からの手紙、電話、FAX、電子メールでの問い合わせを連日受けてい ますが、近い将来、コンピュータでのオンラインアクセスを可能にして目録情報を提供できるよう計画中です。

14世紀の手書き本から20世紀のCDーROMが集められているオズボーン コレクション。カナダ国外に住んでいても、コンピュータを駆使することで、過去600年にわたる子どもの本の旅をする日が、もうすぐやって来るかもしれません。

top

上記は「図書館雑誌」1996年5月号に掲載された原稿「オズボーン コレクションへの招待」に加筆訂正したものです。
最終校正日2002年3月18日

The Osborne Collection of Early Children's Books
Lillian H. Smith Branch
Toronto Public Library

239 College Street, 4th floor
Toronto, ontario,
M5T 1R5
Canada

Phone: 416 393 7753
Fax: 416 393 7635


開館時間:
月曜〜金曜 10時〜6時

土曜 9〜5時
日曜および祝日休館

オズボーン・コレクションの出版物、目録全二巻、復刻版書籍、展示カタログなどは、ニューヨークのBattledore Ltd. http://www.childlit.com/battledore/index.htmをつうじてお買い求めになれます。

Yukazine

Yukaのホームページ
Copyright 2002 Yuka Kajihara